【英日/文芸翻訳】村上春樹訳の絵本『空飛び猫』素敵な訳文3選(ル・グウィン:Catwings )
『ゲド戦記』の原作者アーシュラ・K.ル・グウィンの絵本『Catwings』を、村上春樹訳と対にして読みました。
羽を持って生まれた4匹の猫たちの物語で、文量は文庫本サイズで見開きで約17ページくらい。
ここでは村上春樹さんの素敵な訳文を3つ紹介させていただきます。
村上春樹さんの『空飛び猫』素敵な訳文3選
絵本らしい修飾語がたくさん
lunging at her with open, white-toothed jaws, and Harriet with one desperate mew flew straight up into the air and over the dog’s staring head and lighted on a rooftop
Catwings
白い牙のはえた口をがあっと開けて襲いかかろうとしたとき、ハリエットは切羽詰まったようにみゃおうと一声鳴いて、そのままふわりと宙に飛び上がり、ぽかんと見上げる犬の頭の上を越えて、屋根に降りたったのです。
空飛び猫
村上春樹さんの『空飛び猫』は、全体的に擬音語・効果音などの修飾語が多いように感じました。
この文は特に修飾語が活き活きしていて、「があっ」で臨場感、「みゃおう」で恐怖感が出ていて、「ふわり」で空気が変わって、「ぽかん」と終わるメリハリがとても素敵です。
原文からこんな情景を見てみたい
The sun set. The city lights came on, long strings and chains of lights below them, stretching out towards darkness.
Catwings
もう日は沈んで、見下ろす地上には町の光の列が長く長く連なり、それがずっと向こうの方で暗闇の中に吸い込まれていました。
空飛び猫
『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』で灰島かりさんが
絵本の翻訳は、英語をきちんと読み取って、的確かつ美しい日本語にするというのが基本です。
とおっしゃっているんですが、この訳文はまさに、的確かつ美しい日本語に見えました。
村上春樹さんの個性的が出ている一文
Her eyes grew round.
Catwings
その目は満月のお月さまのようにまん丸くなっていました。
空飛び猫
日中の場面の文章です。
前後にも「夜」や「月」という単語は原文にありません。でも絵本の雰囲気にはぴったりなんです。
私がこの絵本の中で、最も惹かれた一文です。
Catwings/空飛び猫 をどう精読したか
今回は
- 日本語で通し読み
- 1文づつ英語を読む→訳文を確認する
- 気になった箇所に付箋貼り
- アウトプット(インスタ・この記事用)
という流れで、英語と日本語を楽しみました。
村上春樹訳の絵本は『おおきな木』と『ポテト・スープが大好きな猫』も持っているので、いずれ記事にしたいと思います。
最後に、もしよければこの記事の感想をインスタグラムのコメント欄にお寄せください。
この記事で読み比べた本
- 残念ながら、英語版のCatwingsはプレミア価格で売買されています。手ごろな値段で中古品が売り出されているタイミングでぜひ購入してください。( Amazonよりもメルカリの方が安い傾向があります )
引用文献
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